大人のためのサッカー教室

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 大人の教室の一番長かった日 初の対外試合の顛末記
 
< 解説 > 
12回に及ぶ「大人のサッカー教室」の最終回の授業で、男性上級コース(2000年当時)の対外試合が企画された。
招致した相手は、北区シニアリーグの中堅FCコスタリカ・シニア。
1月に初めて顔をあわせた者同士が、3ヵ月後に完全なチームとしてまとまるまでを描いた感動巨編。乞うご期待!

BY:キャプテン・ナカザキ
  
  
★ プロローグ 
いつ頃からだろう、自分が「どれくらい上手くなったのか」試してみたい気持ちが強くなり始めたのは・・・。
大人のサッカー教室」に通い始めた頃は、コーチに教えてもらうこと全てが新鮮で、
毎回の練習は驚きと納得、そして自分のプレーに対するもどかしさで終わっていました。
コーチに教わったことを覚えるのに必死で「自分なんかまだまだヘタクソだ」と思い込んでいたのは僕だけではないはず。
それがだんだんとミニゲームや練習試合で自分の納得できるプレーが出来たり、自分のプレーで周から「オー!」なんて感嘆の声が上がったり、「ゾノ!」なんて呼ばれたりすると、「俺ってドリブラ〜」モードになってしまったり。
正直自分自身「教室の練習試合」の中では「教室の効果」を感じていただけに、練習後の飲みの席で「試合やってみてーなー」とか「試合やったら誰がどこのポジションかな?」という話題になるのは自然な流れだったと思います。そんな時でした、浜ちゃんから対外試合の提案があったのは・・・。
 
  
★ キモチの変化 

最初は「試合だ!試合だ!」と単純に騒いでいたクラスの面々も、1ヶ月ぐらい前からは「誰がレギュラーか?」が気になりだしてちょっとソワソワ。
コーチもそれをネタに、練習や飲み会で僕らをアオる、アオる、無邪気な顔してヘコまされた奴数知れず。
そもそも実力はあまり変わらない者同士、やっぱり誰だってレギュラーを取りたいモノ。
実際この頃の練習は、各自が良い意味で「あいつに負けたくない」とライバル心を持ち、
練習に集中していたので、サッカーを「楽しむ」がコンセプトだった「大人のためのサッカー教室」には
今までにはなかった“緊張した空気”が流れ始め、とても「刺激的」な感じでした。
そんな時です、僕たちのキモチを決定的に“変える”事件が起こったのは。

試合も近づいた3月12日の練習は、見慣れない面々が練習に参加していました。カオルコーチに「あいつらヘコませてやりな!」といわしめたその面々は「木村和司のサッカー教室」に参加した10数名の体験入学者でした。森下コーチは考えました。「試合前だから体験生と既存生を練習中から対戦させよう」と。その日のメニューは「1対1のディフェンス」。チョットうまそうな雰囲気をかもし出す彼らとの対決の結果は・・・

チンチンにやられてしまいました。練習でもミニゲームでも。
実は向こうは全員ある程度の経験者、なんと現役の高校サッカー部員もいたというから反則というか驚き。
当然技術の違いは如何ともし難いものがあります。
そんな彼らといったい何が違ったのか、僕らに何が足りなかったのか。
コーチ曰くドリブルやフェイントではなく、もっとサッカーの基本の部分だ、とのことでした。

それは「プレーにおける激しさ、厳しさ」。

良識ある(?)大人の集まりでもあり、「楽しくサッカーを!」をコンセプトにしていた僕らは、練習でもミニゲームでも「相手に怪我をさせてはいけない」ことを前提に、自然とプレーが「軽く、淡泊」になっていました。
確かにいろんな人が通う「大人のためのサッカー教室」のコンセプトを考えれば当然といえば当然。
しかも最近は怪我人が出たり、MLでも「ラフプレー」について注文があったりしましたから。
が、これでは当然経験者に対してや試合には通用しないんです。
試合が決まってからというもの、コーチは練習中に口酸っぱく「プレーが軽いよ!」と言っていたのですが、
「厳しいプレーとはどういうモノか」を身を持って経験したことのない僕らは
「なんとなーく」な感覚でしか「厳しいプレイ」を実践できないでいました。
そこに彼らとの合同練習です。驚いたのは、こちらが「やりすぎたカナ」と思い「ゴメンネ」と謝るようなプレーにも
「全然普通っすよ!」と平然としていたこと。
彼らはサッカーのプレーにおける「スタンダード」を、僕らに身を持って教えてくれたのです。

ただ、そうは言っても僕らのボディーは「酒にまみれ、前屈−30cm」なんていうのも珍しくないくらい錆びきっています。
無理に激しいプレーをして怪我をしてしまっては本末転倒です。
しかーし、僕らはここで重大な決意をしたのです。

「試合に勝つ為にはこのままではいけない」。

僕らに足りないものを身を持って実感した時、「クラスでの練習に限ってはフェアで激しいプレーをしようじゃないか!」と。
脛当ても持ってこようと。
それからの練習は球際の粘り、声を出すなど技術以外のサッカーの「基本」を自然と意識するようになりました。
正直サッカーに対する姿勢においてクラス全員が「一皮剥けた」感じがしました。

この頃からでしょうか、教室がただの「教室」ではなく「クラブ」っぽい雰囲気を出し始めたのは。

 
  
★ 決戦前夜 
試合が決まってからというもの、コーチの口癖は「試合で使わないから」。
すぐサム〜いギャグを言ってしまう片岡君などは攻撃の的。
練習や飲み会で「レギュラーは決まっていない」ことをアピールし、
僕らのキモチを手のひらでもて遊ぶかのごとく、モチベーションを高めてくれました。

そんな森下コーチのキモチに答えるべく試合前夜、クラスの有志が都内の飲み屋に集まりました。
こんな風に生徒だけで集まって、ざっくばらんな話が出来るのも、
コーチが身銭を切って皆を練習後の飲みに誘い、コミュニケーションを取ってくれたおかげ。
本当に感謝、感謝。ここまでお世話になったコーチの為にも何としてでも勝とうぜ!とモチベーションも最高潮。

そこに吉岡さん
「森下さん(当時のコーチ、編者注)がさー、俺に言うんだよ。今度の試合は勝っても負けても結果はどっちでもいいよ、だけど俺が教えた一番大事なこと、声を出すことと、取られたボールは全力で追うこと、これがきちんと出来れば俺はうれしいし、結果は絶対ついてくるって・・・」

一同ジーン・・・。さすが森下、ナリはチャライがこんな古風なところが、みんなを惹きつける彼の魅力。
3段の全員がこの時は本当に「このチームで勝ちたい!」と思っていたはず。
みんなの為に、森下さんの為にと「たかが対外試合」でここまで結束力が高まるのを感じ、
良い仲間に恵まれたなーと実感。
ひとり吉岡さんだけが「勝ってヤツが「泣いたり」でもした日には、一生飲みの席のネタにしてやる!」
と悪魔の笑いを浮かべていました。
本当に僕自身、こんなドキドキ感を味わったのは童貞喪失の時以来。
久しぶりの緊張感はオトナになってからあまり味わうことがなくなった、本当に心地良いものでした。
 
  
★ いざ決戦! 
なんと不覚にもコーチを乗せたMySurfは渋滞にハマッテしまい30分もの大遅刻!!
やる気マンマンの皆からは当然ブーイング。
テーピングを巻く僕の脇でまずコーチが始めた練習は皆を整列させたランニング。
これがミョーに今日の雰囲気にハマッテいて、ちょっとカッコイイ感じ。
また各自、相当気合いが入っているらしく、柳原さんはアップから汗びっしょり、
吉岡さんは過緊張からみんなと違うストレッチをやり始め、松田さんは1対1の練習中にスライディング炸裂、
極めつけはトレシューできたタッキーはぬかるんだグラウンドを見て赤羽までスパイク買いに行く始末!
違う意味で気合いの入ってる奴もいたりして。
そんな中相手チームが到着。まず目に入ったのが「FIFA」ロゴが入ったベンチコートを着たガタイ良しめのオッサン。
「FIFA」・・・ウーン、こういう時の威圧感は抜群です。
さらに浜ちゃんに対し「場所わかんねーよ」といきなりのでかい態度を目の当たりにした僕らは飲まれ気味?
「なんかウマソー」「テクニックありそー」しまいには「イナスのうまそうだよ」なんて深読みしすぎる奴までいて。

いよいよ試合前のミーティング。スタメンが発表され、各ポジションの選手に森下コーチからの細かい指示がとびます。そして最後に森下コーチから一言。「プレーは激しく、キモチはクールに今まで練習したことを思い出して一生懸命頑張ろう!」。各自の想いが交錯する中、こうして初めての対外試合が始まりました・・・
 
  
★ マッチリポート(30分×2本) 

キックオフから飛ばし気味の3段。相手チームの「やらせておけ!」と妙に自信と余裕をもった指示の声が気になる。
しかし徐々に試合が進む中で相手の力量が判ってき始め決して勝てない相手ではないことを確信。
最初のチャンスは3段、ディフェンスからのクリアボールを前線の左スペースで受けた中崎がドリブル。
ペナルティー手前、こいつをかわせばGKと1対1という場面でDFのアフタータックル。
完全なファールにも相手DFは全くの平然な顔。謝りもしない大人げない態度に中崎怒り50%。
松田さんが蹴ったFKは惜しくもクロスバー上。
その後、前半15分頃まで押し気味に試合を進めるも自らのミスもありなかなか決定的なチャンスが創れず。
そうしている内にカウンター気味のクリアパス1本からDFが振られ失点。
押し気味に試合を進めていただけに、がっくりくるも慌てた様子はない。が、ここからコスタリカペース。
試合慣れしていないせいか、どうしても押し込まれると全員自陣に引いてしまい、たまに1トップにクリアボールが渡るも、
どうしても孤立してしまいチャンスには至らず。そんな流れの中、GKケンタロウに不運なミス。
ペナルティーエリアのラインが消えていた為、ボールをキャッチした場所がなんと微妙にエリア外。
絶好の位置で相手にFKを与えてしまう。
これを向こうが「もう2度と蹴れませんよ」というFKを決め0−2、ここで前半終了。

ハーフタイムのコーチの指示は
「ポジションのバランスが悪い、みんながボールに寄りすぎ」と
「相手はパスを回すでもなく、ただクリアしているだけ、技術は俺達の方があるから自信を持っていこう」
と激を飛ばす。
またFW中崎から「相手DFの足が遅いのでウラを狙おう」と。
2点のビハインドにもみんなのモチベーションは下がってない様子。
またここまでは運動量も落ちていないし、プレーは激しくキモチはクールに、はなんとか実践できている。

後半、開始早々この日1番のビッグチャンスが訪れる。
ルーズボールを相手DFと顔面ブロックで競り勝った中崎がGKと1対1に。
慎重に(ビビリながら)股下を狙うもGKがファインセーブ、痛恨の決定機ミス。
ここで決めていれば流れも変わったが、その後前半からの流れで再度押し込まれる展開。
しかしボランチ片岡を中心にしたガンバリなどで相手にも決定機をあたえず。
しかし3段も時折松田、シゲさんを中心としたカウンターを見せるも決定的なチャンスには至らず、ゲームは膠着状態。
そして後半も20分頃、ここまで相手の決定的なシュートを片山さんがゴールライン上でかき出すなど、
押し込まれながらも脅威の粘りで耐えていたDF陣が一瞬の隙を突かれ、右サイドでまたもや振られてしまう。
ボールにつられた為、逆サイドに渡ったセンタリングを冷静に決められ0−3。
試合を決定付けるこの失点後も、何とか1点をと中崎、伊礼を中心に諦めることなくDFのウラを狙うが、
悲しいかな気持ちに体が付いてこず、チーム全体運動量が落ち始め、分厚い攻撃には至らず。
終了間際、この日2度目のビックチャンス、サイドハーフの伊礼がセンターサークル付近からのダイレクトパスで縦に抜け出し、
GKと1対1になるも、相手DF猛追にシュート直前でブロックされ、万事休す。
クラス初めての対外試合はほろ苦いながらも、たくさんの財産を残して終わったのです・・・

  
 
★ エピローグ  
確かに、試合に負けたことは悔しいです。
僕なんかは1対1で外した場面が未だに頭をよぎります。
しかし、コーチは「今回は負けて得るものの方が多かったかもよ」といいました。
1番重要なのは「試合に勝つ」ことではなく、「大人のためのサッカー教室」を通じて
僕自身がサッカーの「魅力」にどんどんハマッテいっている、という事実です。
今まで僕が所属していた草サッカーチームでは単純に「ボールを蹴っている歓び」だけでした。
それが、この3ヶ月間の練習やいろいろなイベント(飲み会ね)をこなして行く中で
(練習による驚き・学習、練習で上手く行った時の歓び、コーチ・仲間との出会い・連帯感、考えるプレー、
仲間と一緒に練習することで相手の特徴を考えたプレー、チームへの愛着心、試合の緊張感、
そして仲間と全員で味わう試合の歓び・悔しさ)と様々な経験をしました。
これはレベルこそ違えど、Jの選手や高校サッカーの選手が味わっている「サッカーの魅力」と一緒なのではないでしょうか。
少なくとも、僕自身の中では「サッカー」は「ただの球蹴り」ではなく、
周りの環境全てを含めた「サッカー」という生活の一部になってきています。
そしてこの歓びを与えてくれたのは紛れもなく「大人のためのサッカー教室」です。

まだ半年、浜ちゃん、森下コーチ、クラスの仲間を始め、サッカー教室に関わる皆さん、
これからもすえながーく、よろしくお願いしまーす!

 
  
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